nicona's note.

- フリーランス・グラフィックデザイナーのつれづれBlog -

*『すそ野派』がじわじわ世界を豊かにする?*

暖冬だったこの冬、いきなり積もった大雪に四苦八苦。やっとこさ今年最初のブログを書いています。今年もよろしくお願いします!

さて、今日はずっと書きたかった『すそ野派』について。いまの働き方や個人の在り方として、おもしろい表現だと思ったのでお話しします。

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目指すは頂上、ではない人たち

私が会社を辞めることを考え出した時に、背中を押してくれた一冊があります。西村佳哲さん著「自分の仕事をつくる」(ちくま文庫)。西村さんは働き方研究家として、いろんな人をインタビューし、貴重な対談記録を著書にまとめています。そこで登場する人たちの仕事の話がとにかくおもしろい。波乱万丈で情熱的な半生もあれば、静かにコツコツと道を極める半生もあり。いずれも、シゴトと自分ゴトの境目をハッキリ付けるというよりは、どちらもその人の生き方になっている感じがありました。

会社を辞め、西村さんの働き方シリーズをさらに読みあさっていたころ、ちょうどご本人のワークショップが開かれるというので、多摩美上野毛校舎を訪れました。

著書に登場したフリーで働くデザイナーさんや、個人でお店を出したり商品を作っている方々のお話を聞き、参加者同士で意見交換をするという内容。そこで西村さんが語ったのが『すそ野派』についてでした。

いま、仕事をするうえで地位や名声を極めるよりも、自分の本当に良いと思うことを突き詰めようとしている人たちの働き・仕事がおもしろい。彼らは山の頂上を目指すのではなく、すそ野を広げようとしている人たちであると。
「その人たちを『すそ野派』って勝手に呼んでいるんです。」
そう笑って話す西村さんを前に、わたしはその言葉の響きに胸が震えました。

豊かな森が広がるように

フリーの人もいれば、会社にお勤めの方もいて働き方は様々ですが、西村さんがインタビューをしているのはみんな『すそ野派』の人たち。自分の信念を貫くことは、もちろん厳しさの中でもがくことも多いようだけど、とても豊かに、そして地に足がついているように思えました。なにより、自分の仕事が本当に好きそうで。

そんな人たちが自分の嗅覚をたよりに、ゆるく広がったりつながったりしていく。そこで生まれるモノやコトは、正直でまっすぐ。ごまかしがない。

思えば、自分が心地よさを感じるお店や愛着を抱くものって、こんな匂いが漂っているのかも。その背景には、こういう人たちがいるんだろうか。だとしたら、世の中じわじわと豊かなものになっていきそうだ。そう考えて、うれしくなります。

そして、わたしもぜひその仲間になりたい。
自分の森を育てたいと思うのです。

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わたしの父も会社勤めを経て、自分ひとりで仕事をすることを決めました。苦労も多いようだけど、わたしにはいつもイキイキとたのしそうに見えます。この人も『すそ野派』だったのかと、ひそかに納得してしまいました。

ではまた、にこっと笑顔でお会いしましょう。

 

 *今日ご紹介した本*

自分の仕事をつくる (ちくま文庫)

自分の仕事をつくる (ちくま文庫)